囲碁十段戦の楽しみ方

いよいよ開幕する第58期十段戦5番勝負。

例年、棋聖戦が盛り上がっている裏でひっそり始まる印象が強いこの棋戦ですが、今期は芝野名人の初挑戦と言うこともあり例年以上にファンの注目を集めています。

この記事では、十段戦とはどんな特徴があるタイトルなの?という疑問に答えつつ、今期の挑戦手合いの注目ポイントについても書いていこうと思います。

十段戦てどんな棋戦?

十段戦は産経新聞社、森ビルがスポンサーとなっている棋戦で、優勝賞金額は700万円です。挑戦手合制の棋戦としての序列は7位となっています。

かつては1500万円、序列4位の棋戦でしたが第51期より現在の700万円となっています。

十段戦の特徴として以下の点に注目しました。

  1. 20名による挑戦者決定トーナメント
  2. 関西での対局が多い
  3. 唯一名誉称号保持者がいない

順に説明します。

十段戦の特徴①20名による挑戦者決定トーナメント

十段戦の挑戦者となるには、20名による本戦トーナメントで優勝しなければなりません。本戦に参加するためには2年近くに渡る予選を勝ち抜く必要があり、非常に長い戦いとなります。

抽選は9月末で、その後翌1月に決勝戦が行われます。

本戦トーナメントは16名で行われることが多いですが、10段戦は20名(予選通過者16名+前期本戦ベスト4)で行われるため、少しだけタイトルに挑戦できる可能性が高いと言えなくもないです。

勝ち抜くには確固たる実力と同時に勢いも必要だと思います。

※以前は敗者復活制を採用していた

以前は7大棋戦で唯一敗者復活制(本戦トーナメントの敗者が敗者復活トーナメントに回る)を採用していたようですが、現在その制度はなくなっています。

個人的には、挑戦者には勢いを含めた最強の一人を選ぶべきだと考えているので、敗者復活制は不要だと思う一方、一つぐらいそういう棋戦があっても面白いのでは、と思うので復活希望派です。

十段戦の特徴②関西での対局が多い

7大棋戦と言えば、全国各地を回りながら対局を行う、というイメージがあります。対局前日には前夜祭を行い、地元ファンとの交流を深める催しなども行われます。

一方、第59期十段戦の対局地を見てみると、以下のようになっています。

  • 第一局:大阪商業大学(東大阪市)
  • 第二局:関西棋院(大阪市)
  • 第五局:関西棋院(大阪市)

関西、というか大阪対局が過半数を占めます。

棋院での対局が多いのはもしかして予算の都合・・・?とか思ったりもしますが、特徴的なのは大阪商業大学での第一局でしょう。

同大学は第49期から対局地として採用されています。

これは井山名人(当時)が張栩十段(当時)に挑戦する第49期の5番勝負に初登場することに合わせて、彼の出身地である東大阪市が対局地として立候補したことがきっかけだそうです。

大阪商業大学は東大阪市にキャンパスを構えており、囲碁教育に力を入れていることが特徴の大学でもあります。囲碁に関する講義や、囲碁の能力を生かした頭脳スポーツ特待生制度という入試制度もあるようです。

https://ouc.daishodai.ac.jp/

プロ棋士の手合いにおいて「ホーム&アウェー」の感覚がどれほど働くのかは定かではありませんが、関西出身の棋士は少なからず応援の風を感じることにはなるでしょう。

十段戦の特徴③唯一名誉称号保持者がいない

7大タイトルを連続5期、あるいは通算10期獲得すると名誉称号を関することができます。

現役の棋士では小林光一名誉棋聖、名誉名人、名誉碁聖の名誉三冠、趙治勲名誉名人、25世本因坊の二冠、林海峯名誉天元など。いずれも大棋士です。

井山棋聖は名誉棋聖、26世本因坊、名誉天元のを名乗る資格を得ています。

このように、大変な偉業であり決して簡単なことではありませんが、長い囲碁の歴史の中ではあらゆる棋戦において誰かしら名誉称号を保持する棋士がいます。

しかし、なぜか十段戦にはいません。

勝ち続けることが難しい棋戦であることを示唆していると言えます。

※原因について考察した記事を後日アップ予定

第58期十段への挑戦権を懸けた熱い戦い

今期の挑戦者決定戦(本戦トーナメント決勝戦)は激しい戦いの碁でした。

決定戦の組み合わせは井山棋聖 vs. 芝野名人でした。

前期に十段を失冠し、帰り咲きを狙う井山棋聖。

一方前年に井山棋聖の最年少名人記録を塗り替える名人奪取、さらに勢いそのままに王座戦で井山棋聖から王座を奪取した最強棋士の芝野名人。

注目の対局は、2020年1月30日に行われました。

私はプロの対局を解説する棋力がないので、いつも勉強させていただいてるrido channelさんの解説動画を貼らせていただきます。

rido channel様、貼り付けに問題があれば削除しますのでご連絡ください。

結果は芝野名人の中押し勝ちとなり、村川十段との5番勝負へと駒を進めました。

第58期十段戦挑戦手合いの見どころ

3月3日に開幕する十段戦挑戦手合い。

村川大介十段と芝野虎丸名人との対局ですが、どのような結末となるでしょうか。

個人的には以下の3点に注目しています。

  1. 勢いに乗る最強の挑戦者芝野名人の初戦
  2. 関西での対局が地元の村川十段に有利に働くのか
  3. 他の棋戦での戦いが芝野名人の打ち回しに影響するか

見どころ①勢いに乗る最強の挑戦者芝野名人の初戦

この5番勝負ですが、初戦を取った方が3勝1敗で勝つと予想しています。

実力、勢い共に現在最強の芝野名人(先日のNHK杯では一力八段に捻られた感がありますが)が勝った場合は3連勝もあり得ます。

二人の対戦成績などは分かりません。少し年も離れているし、関西棋院と東京本院で所属も異なるので何かのリーグで当たらない限り対局数は多くないと思っています。

予選の勢いを保ってそのまま突っ切るか、村川十段が出鼻をくじいてペースを乱すか。3月3日の初戦に注目です。

見どころ②関西での対局が地元の村川十段に有利に働くのか?

上述したように、十段戦は特に関西での対局が多いです。

村川十段は関西棋院の棋士であり、まさにホームでの対局となります。

いざ対局となれば場所は関係ないでしょうが、そこに至るまでの環境が慣れた場所なのかどうか、という点は多少影響するかもしれません。前の日にホテル泊か自宅か、等。

環境を考慮すると村川十段に有利なようにも思えます。ただ一方で芝野名人の飄々とした雰囲気からは、多少の環境の違いがパフォーマンスに影響するとも想像しがたいです。

普通に前夜祭の後で asaringo さん (上野愛咲美女流本因坊) と野狐とか打ってそう・・・。

見どころ③他の棋戦での戦いが芝野名人の打ち回しに影響するか

十段戦の挑戦手合いの最中にはもちろん他の手合いも行われます。

第一局が3月3日で、最終局までもつれた場合には第五局が4月28日に行われます。

ここで十段奪取に向け戦いを進めながら、芝野名人は他の棋戦でも挑戦権を懸けた戦いが続きます。

例えば本因坊リーグ。芝野名人は現在4勝1敗で1位タイです。

三月には山下九段とのリーグ第六局、4月にはリーグ最終戦が行われます。

他の棋士の成績にもよりますが、4月には挑戦権を懸けたプレーオフが行われる可能性が高いと思われます。

これらの重要な戦いを重ねていくことによって芝野名人がどう影響を受けるのか、とても注目しています。

コンディションを整えるだけでも気を遣うと思うので、安定したパフォーマンスを発揮できるのか。

あるいは対局を重ねることでどんどんレベルアップしていくのか。

はたまたどこかでリズムを崩してしまうのか。

芝野名人の飄々とした(以下同文)、個人的にはここから数ヶ月の対局で芝野名人がさらに強くなるのではないかと思っています。

十段を奪取し、勢いそのままに本因坊の挑戦も決めそうな予感がしています。

十段戦の結果だけでなく、芝野名人個人の成績からも目が離せません。

囲碁十段戦の楽しみ方まとめ

最強の挑戦者芝野名人が村川十段を勢いそのままになぎ倒してしまうのか。

村川十段も当然のごとく超一流棋士なので、地の利?も生かして名人の出鼻をくじくことが出来るか。

初戦に注目、楽しい戦いが見れそうです。

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