『囲碁を始めて、ルールはある程度理解できるようになった。早く初段になりたい』
『頭のやわらかい子供ならまだしも、、、大人になってから囲碁を始めた自分にこれ以上の上達は見込めないのかな』
この記事は、上記のような悩みをもつ「大人になってから囲碁を始めた」方、そして「1つの目標として初段を目指しているけど伸び悩みを感じている」級位者の方に向けて書いています。
囲碁は頭脳スポーツの最高峰ですし、始めるにあたっては小さいころからの方が伸びやすいという一面も確かにあると思います。
しかし、それはあくまでプロを目指すとか、アマ名人になるとかそういうレベルの話です。
初段を目指すぐらいのことであれば、大人になってから始めたとしても到達は決して不可能なことではないと思います。
何としても初段になりたい!という方、必見です。
囲碁の始め方についてはこちらの記事もどうぞ。
はじめに
初段ってどれぐらい強い?
囲碁の初段とはどのような実力なのでしょうか。目安としては以下のような基準があります。
- プロに9子置いて勝つ
- 碁会所の席亭さんが大体の判断をしてくれる
- 大会で初段でエントリーして対等に戦える
順に見ていきます。
プロ棋士に9子置いて勝つ
まず「プロ棋士に9子置いて勝てれば初段」という基準ですが、これは分かりやすいですがあまり機会がありません。
お金を払って指導碁を受けるか、囲碁のイベントなどに参加してそこで指導碁を受けるか(イベントだと指導碁にお金が掛からないことも多い)。
いずれも難点は、お住まいの地域によってはプロに打ってもらう機会が設けられないこと。指導碁しかり、イベントしかり。
あとイベントってちょっと参加するのに足踏みしますよね。勇気を出していってみると大したことはないのですが、初めて参加するときには結構緊張します。
仮に打てたとしても、プロの指導碁はほぼ多面打ちなのでそこで9子置いて勝てたとしてもどうなのか、、、という疑問も残ります。
碁会所の席亭さんが大体の判断をしてくれる
次に「碁会所の席亭さん」ですが、碁会所の席亭(マスター、オーナー)さんは多くの場合囲碁がめちゃくちゃ強いです。
碁会所に通って何局か打っていると、たとえ直接の対局がなかったとしても席亭さんはあなたがどれぐらいの棋力なのか分かってきます。
ですので、ある程度対局を重ねた段階で直接聞いてみるのがいいと思います。
碁会所によっては甘めに判断することもあるようですが、複数の碁会所で確かめられれば精度は高まります。
大会に初段でエントリーして対等に戦える
あとは「囲碁大会に初段でエントリーして半分勝てるか」 とか、「巷で自称初段の方と打って互角に戦えるかどうか」も棋力のチェックには有効です。
囲碁大会は日本棋院が主催する段級位認定大会に参加するのもいいと思いますが、場所によっては級位のみで段位認定がなかったりします。
まれに級位認定大会において、1級で全勝すると初段認定という場合もありますが、初段と打っていないのでそれもどうかと。。。
やはり大会で言うと「寶酒造杯」がおススメです。お酒飲み放題ですし。
多くの場合、大会では5局程度打ちます。 自己申告による段位別のエントリーなので、そこには「自称初段」が大量に集まるわけです。
そしてその自称初段が集まる戦いで「3勝以上」できればおそらく文句なしに初段だと思います。
アマ3段から見て、初段はどの程度の実力か
『初段であることの確認の仕方はわかったけど、具体的にどのぐらい打てれば初段になれるの?』
このような疑問について、比較的初段に近い私の感覚から目安を示します。
私は、先ほどの3つの基準に基づけばアマ3段程度の実力となります。
具体的には、以下のような経験があります。2/3項目で3段の条件を満たしているかな、と言ったところです。
- 「プロ相手には指導碁で6子で勝ったことがある」⇒ ○
- 「碁会所では5段に2子置いて打つけどあまり勝てない」⇒ ×
- 「寶酒造杯で3段戦にエントリーして2年連続3勝2敗」⇒ ○
※ちなみに指導碁は下坂美織先生です。
このようにいくつかのものさしがあるので、自分が3段ぐらいあることに関しては割と自信を持っています。早く5段になりたい。。。
そのような私の個人的な感覚でいうと、初段はこのぐらいのことができる強さです。もちろん人によりますが。
- 基本的な手筋は良く見える
- 見えすぎて、利き筋の考え方がなかなかできない
- ヨセはよくわからないが、サルスベリとか一線のハネツギは好き
- 隅の基本死活は完璧には理解していない
- 人によってはクシ形の活きを知らない
- 地が好きな人が多い印象
- NHKの囲碁講座では半分以上はわかる
- コウはまぁわかるし怖くない
- 三々に入られるのはちょっと嫌
- 石の方向で定石を使い分けるとかあまりしない。小目はツケヒキ、ナダレは怖い。
いかがでしょうか?意外と大したことなくないですか?
級位者からすると恐怖の対象でしかない初段ですが、結構何もわからず打っています。
ちなみに私は今3段ですが、3段がこんなにもわからないことだらけのまま打ち進めているレベルだなんて思いもしませんでした。
雑誌によくある認定問題、あれ本当に解けません。特に死活。
『初段はそんなに強くない』
初段を目指すにおいてはそのような認識で捉えておくのがいいかと思います。
初段は頑張れば届く、しかし簡単ではない
初段は決して強くない、むしろ穴だらけだという話をしました。
しかし、それ即ち「初段になるのは簡単」だということではありません。
特に級位者として燻っている方からすると、今までずっとできなかったことを積み上げる必要がありますので、それなりに努力する必要があります。
「何年も初段になりたくてなれていない」そのような方は、これまでとは質的にも量的にも違う努力が必要になりますね。
何もせず漫然と、碁会所の友達とワイワイ打つことを楽しむだけでは決して上達しません(そのように囲碁を打つことを否定しているわけではありません)。
本気で上達したければ、努力しましょう。
『具体的にどんな努力をすればいいのか?』について以下に述べていきます。
囲碁初段のための上達法とは?
囲碁に限らず、段級位で実力が評価される競技において、初段とは一つの大きな節目です。「初段」ってとても響きがいいですし。
「せっかく始めたのだから、初段にはなりたい」
このように考える方はとても多いと思います。
私自身、初段を目指して努力してきました。
囲碁に関しては初段を通過することが出来ましたが、少年時代に取り組んでいた珠算(そろばん)については3級どまりで、初段になることができませんでした。
競技は違いますが、「初段が遠い」と感じるその感覚も持ち合わせていますので、「囲碁で初段を目指しているけどなかなか届かない」と感じる方の気持ちも理解できます。
私が考える、初段になりたい級位者のための上達法は以下の3つです。
- 指導碁を受ける
- プロの棋譜を並べまくる(お気に入りが出来ると尚良し)
- 死活に特化して猛勉強
順に説明していきます。
1、指導碁を受ける
指導碁は、碁会所の席亭さん(アマ強豪)だったりプロだったりと対局をして、対局後に自分の打った手の良しあしなんかを教えてもらって、、、という指導方法です。
自分より強い人と打ってもらえて、自分の手について直接評価をしてもらえるなんてのはとても貴重なことで、指導碁で教わったことの吸収率が上達速度を決めると言っても過言ではありません。
この指導碁について、重要だと考えているポイントが4つあります。
- 相手はプロじゃなくていい
- 棋譜を取る
- 逃げない(潰せると思ったら挑む)
- 検討では意見をぶつける(絶対にすべき質問アリ)
順に見ていきます。
1-1、相手はプロじゃなくていい
「指導を受けるならプロからじゃないとダメ」という話を聞いたことがあります。
「アマチュアに教わると変な癖がつく」という言説も。
しかし、私はこれについては異を唱えたいです。
最初にも述べましたが、もしあなたがプロ棋士になりたいのであれば教わる相手は厳選した方がいいのかも知れません。
しかし、アマ初段なんて碁打ち界においては底辺に近いです。アマチュアに教わってもたどり着けます。
肝心なのは以下に述べる、「指導碁を受ける側としての心構え」です。
さらに言うと、プロ棋士になってしまうような囲碁お化けの殆どは、自分が級位者であったことの記憶がないと思います。
「何でこんなことがわからないのか?」「何故この3手が読めないのか」
このような感覚をお持ちのまま指導されているかもしれません。もちろん人によると思いますが。
九九がわからないのに、東大生を数学を教わりますか?
「覚えればおしまいでしょう」と言ってしまいそうです。しかしその覚え方を知りたいのが級位者なんです。
「81個も計算があって大変だ」と教えを乞うのが級位者なんです。
キチンと局後の検討をしてくれる方であれば、プロアマは問いません。
同じ先生から定期的(週1回~2週に1回)に指導を受けるようにして下さい。
ここのお金を惜しまないようにしましょう。
1-2、棋譜を取る
私自身、指導碁を毎週同じ先生(アマ強豪)から受けてきました。
日によって置き碁であったり、序盤を鍛える目的で定先だったり。
その対局の全てを棋譜に残してきました。以下はそのうちの一局。
棋譜を取って、指導していただいた点を振り返りながら並べ返すことが必要だと思います。並べながら「あれ、ここでこう打ってたらどうなったんだろう」という点を思いつけば次回質問です。
その際にも棋譜を残しておけば並べ直すことが出来るのでとても大事だと思います。
棋譜を残す際には、終盤まで全てつける必要はありません。中盤までつけられればOKです。戦いが起こった場面とその後の対応や、定石部分(ちゃんと打てたか)に関して記録するようにしましょう。ヨセは無視でいいと思います。
棋譜は碁罫紙と赤青鉛筆 or 2色ボールペン。どちらでも大丈夫だと思います。
1-3、逃げない(潰せると思ったら挑む)
指導碁では、常に積極的であることが重要だと思います。
特に置き碁の場合、普通に打てば黒が負けるはずはありません。
しかし、白の手に対して非効率な、あるいは無駄な応手を重ねてしまうが故に差が詰まってきて、最終的には抜き去られてしまうことになる訳です。
白からすると局面が進めば進むほど黒の乱れが大きくなってくるので打ちやすくなります。逆にいうと序盤は黒のミスを待ったり、多少の無理手を打つことも多いと思います。
黒の心構えとしては、白の手にいちいち反応しないことです。
例えば置き碁の場合、
白「星にケイマガカリ」⇒黒「受ける」⇒白「他の星にカカリ」
とすることがありますが、他の星のカカリを受ける必要はないんですよ?
最初のカカリっぱなしの白石にコスミつけて攻めるのももちろんアリです。
その他にも、「白が手抜いたからと言って生きを確信したとは限らない」ぐらいに思って、自分でしっかり読むようにしましょう。
取れるかもと思えば取ろうとしてみましょう。
多くの場合返り討ちに会いますが、それも勉強です。
1-4、検討では意見をぶつける
局後の検討は指導碁におけるメインイベントです。
可能な限り時間を取って頂きましょう。
自分の良くない手を指摘された場合は、「なぜそこに打ったのか」を必ず説明しましょう。
「どうしてここを守らなかったの?」
「何も手がないと思っていました(手抜いて連絡していると思っていました)」
とか、
「ここは切って戦いに持ち込まないと」
「切った後でどこを重視すればいいかわかりませんでした」
「大事なのはこっちの石。こっち(大事じゃない方)を取ろうとしてくるなら捨てて打って構わないよ」
といった風に、自分の考えを伝えることで検討の幅が広がります。
こういったやり取りを繰り返すことで一手一手を大切に打つようになります。
加えて、要所において絶対に上手(うわて)に聞きたいことがあります。それは
「ここでどう打たれたら嫌でしたか?」という点です。
無理目に打っている時は特にそうですが、自分で手が見えながら打っているので「ここでこう来たら厳しいな」という場面があることが多いです。
でも実際下手(したて)はそこに打てないので、内心ホッとしながら打ち進めることができる、そんな場面が毎局必ずあります。
自分なりに自信があったにも拘らず手応えがなかった時、取れるかも思ったにも拘らず仕留め損なったと感じた場面などについては是非質問しておきましょう。
上手が感じた『打たれたら嫌な手があった場面』はあなたが気にしている20手前に過ぎ去っていた、ということもあったりしますよ。
2、プロの棋譜を並べまくる
序盤を意識してとにかく数をこなそう
囲碁や将棋は、プロ棋士の棋譜を見て自分で盤上に再現することができます。もちろんその一手一手に含まれる深い読みをうかがい知ることはできませんが、形を真似るだけでも大きな効果があります。
棋譜並べにおいて意識するのは以下の3点です。
- 長くても100手ぐらいでOK
- プロやアマ強豪ならどの棋譜でもOK
- お気に入りの棋士や棋風に特化してOK
順に見ていきます。
2-1、長くても100手ぐらいでOK
棋譜並べで掴むべきは、序盤の打ち回しだと思っています。
ですので一局の最後まで並べる必要はありません。布石から中盤まで並べて、そこまでの雰囲気が掴めれば問題ないと思います。
一手の良し悪しは分からないし、一局を一回並べただけで何かを吸収できるとも思えません。プロのヨセは分からないので気にしなくていいです。
おざなりにならないように気を付けながらもある程度数をこなしましょう。
2-2、プロやアマ強豪ならどの棋譜でもOK
「変な棋譜を並べてクセがついては困る」
初段を目指す程度の人について困るクセは、プロやアマ強豪にはありません。
はっきり言って強い人の棋譜なら誰でもいい教材です。
新聞を取っていれば各誌が主催する棋戦の棋譜が載ると思うので、それらは残しておいて選り好みせず並べることをおススメします。
棋譜の数で言えばインターネットには多くの棋譜が残されています。
スマホやPCではなく紙で見たい、ということであれば「囲碁年鑑」はおススメです。1年の主要棋戦について、国内・海外、またプロ・アマ問わず掲載されています。
私も2013~14年ごろはこれを買い、その全ての棋譜を並べました。
2-3、お気に入りの棋士や棋風に特化してOK
色んな棋譜を並べていく過程で(あるいはその前から)、好きな棋士がいればその棋譜に特化して並べまくるというのも全然OKです。
「アマチュアは片岡聡先生の棋譜を並べるといい」と7年前ぐらいのNHKの囲碁雑誌に書かれていましたので、それも効果的なのかも知れません。
私は井山先生、山下先生、李セドル先生、趙治勲先生、依田紀元先生の棋譜などを並べまくりました。
彼らの棋風が共通していたかどうか、それはよくわかりません。
ただ言えるのは、「全員めっちゃ強い」こと。
自分が「これだ」と思える形でたくさん並べることが重要かと思います。
今ならAlphaGoとか絶芸、金毛とかの棋譜が勉強になるのかな?
そして覚えた序盤の打ちまわしを実戦で試してみましょう。
繰り返すことで身になっている気がして嬉しいし、形だけでも「○○流」の打ち方ができて何だか楽しくもなります。
3、死活に特化して猛勉強
6段の方が示した重要な力
その昔、6段の人に「囲碁においてどの力を鍛えれば6段になれますか?」と聞いたことがありました。
その人は即答しました。まずは絶対に『死活』だ、と。
曰く「『手を抜いて生きているかどうか』を判断できることは5段を超えるためには必須だと思う」と。
私自身、死活に関してはきわめて怪しいです。そんな私からして、手を抜いて生きていることを確信して大場に回れる、というのはとても羨ましい力です。
裏を返せば相手の生き死にも(恐らく相手よりも)わかることになり、初段レベルにおいては接近戦で無双できます。
死活を鍛えれば、地合いで先行し局面を有利に進めることが出来ます。
初段を目指す上達法まとめ
この記事では、「初段を目指しているが伸び悩んでいる級位者」を対象として、初段になるための上達法をいくつか紹介しました。
まずは「初段はそれほど強くない」ことを理解しつつも「キチンとした努力が必要」であることを示しました。
そして具体的な上達法として「指導碁」「棋譜並べ」「死活の勉強」についての方法や、実際に私が心掛けていたことなどについても紹介させていただきました。
これらのポイントを意識して取り組めば、きっと初段への道が拓けてくると確信しています。
初段になれば、もっともっと囲碁が楽しくなります。
みなさんの上達の助けになれば幸いです。