10代の芝野虎丸名人、10歳の中村菫初段、台湾の美人棋士黒嘉嘉7段の活躍など知る人ぞ知る盛り上がりを見せている日本の囲碁界。
世界戦の活躍は井山棋聖に大きく頼っているような状況(ネットの世界棋戦で決勝戦を戦っている最中とのこと)ですが、先の芝野名人や一力8段や許8段など、井山先生を脅かさんとする若い棋士も台頭してきています。
また張栩先生も日中竜星戦を制しました。ご息女の心澄新初段(予定)にも期待です。
日本強いかも?と思わせる話題も少なくない状況で、穏やかでないニュースが流れてきました。
依田紀基九段は、名人4連覇、NHK杯5期、碁聖6期などタイトルを通算30期以上も獲得されている方で、控えめに言って大棋士です。
そんな依田先生が、2020年2月12日付で6か月の対局停止処分を受けたとのことです。対局のために訪れた日本棋院東京本院において通せんぼを食らい対局ができず不戦敗となったというニュースがありました。
個人的には、今回の依田九段への処分は重すぎるのでは?と思っています。依田九段側からの情報多めですが。棋院の説明が圧倒的に足りてない。
「組織の体制を批判して干される」って典型的なダメ組織じゃないですか。。。
一体何があったのでしょうか。
対局停止処分までの経緯
きっかけは執行部批判ツイート
今回の対局停止の処分に至る経緯とはどのようなものだったのか、簡単ではありますがまとめます。
まずは2019年6月に依田九段がご自身のツイッターで日本棋院の執行部の批判をしたことから始まります。きっかけは夫人の原幸子四段が理事を解任されたこと。
(※解任の原因についてはよくわかりませんでしたが、小林千寿常務理事やシアトル問題と言った単語をネットで目にします。現在確認中)
その後、該当ツイートに関して執行部の外部委員の方から叱責を受けます。
依田九段はその叱責に対して自らの行動を反省し、ツイッター上で謝罪の意を示し関連ツイートを削除します。
その後、日本棋院の理事長(小林覚九段)宛にも謝罪文を送付します。
ここまでで、一連の執行部批判に関するトラブルは幕引きを迎えたかのように読めなくもないですね。
しかし、トラブルはまだ収束していないようでした。
マスターズカップ準決勝の不戦敗
2019年6月に広島県で行われたマスターズカップの準決勝。その前日に現地入りした依田九段は、宿泊先のホテルで理事長およびスポンサーのフマキラー社の会長と会談の機会があったようです。
そしてその場で先の執行部批判について言及され、「準決勝を戦う資格はない」と翌日の準決勝を辞退するよう促されたとのこと。
結果として依田九段は準決勝を辞するという苦渋の決断を下します。
依田九段の決断を受けて、準決勝の対局予定は急遽変更となり、対戦相手の小松九段は本来ならば準決勝の対局が行われるべき時刻にイベントの対局を行ったそうです。
そしてその翌月、7月20日には決勝戦が行われ、大会は趙治勲名誉名人の優勝で幕を閉じたのですが、その後今回を最後に大会が終了するとのアナウンスがありました。
理由は、依田九段の一連のツイートが原因で棋戦に傷がつく、とスポンサーが問題視したため、とされていました。※しかし「棋戦に傷がつく」発言は小林覚理事長の見解とのこと。
https://www.yomiuri.co.jp/igoshougi/20190720-OYT1T50252/
そして対局停止
そして冒頭にあるように2月12日付で6か月間の対局停止処分が下された、とのことです。しかし依田九段は「処分については承服できない」としており、法的措置を含めた対応を検討中のようです。
対局停止処分についての疑問点
一連の流れでいくつか疑問に思うことがあります。
- 「執行部批判によって対局停止処分」という懲罰のバランス
- マスターズカップ準決勝にまつわる棋院側の説明
以上について説明します。
1、「執行部批判によって対局停止処分」という罪と罰のバランス
私は会社員ですが、最近特に会社側から発生する「組織をよりよくするためのヒアリング」などの活動を多く目にします。比較的ホワイト企業だからかもしれませんが、組織としての在り方について、その現場で働く人たちからの意見を聴こうとする姿勢は非常に重要です。
棋院と棋士は雇用関係にはないと思うので、サラリーマンと一緒にすべきではないのかも知れません。ただ棋院に所属してなければ一般棋戦に参加することはできず、碁打ちとして生きていくことに大きな制限が生じることになるので実質的には雇用関係と大きく変わらないと思っています。
依田九段のツイッターによる執行部批判、これはやはり冷静さを欠いた手だったかもしれません。組織の在り方について声を上げる、そのこと自体に何の問題があったのか。ツイッターを用いた批判については本人ものちに謝罪し、該当ツイートを削除されています。
半年間の対局停止。書籍の販売差し止め。
これらの処置が果たして妥当でしょうか。
2、マスターズカップ準決勝にまつわる棋院側の説明
依田九段はマスターズカップ準決勝の前夜、対局を辞することを促されたと言います。そしてそれを受け入れたため不戦敗となり、本来の準決勝の時間には別のイベント対局が組まれたとのこと。
しかし後日の説明で日本棋院は「依田九段が対局開始時刻になっても姿を見せなかった」とし、「自らが選んだ不戦敗」と扱われています。
囲碁・依田紀基九段 日本棋院への不信感訴える…不戦敗強要され「命の危険感じる精神状況」
また一連のツイートに関して「棋戦そのものに傷が付いたとして、フマキラー社がスポンサーを降りる意向を示していた」と小林理事長が説明していました。
しかしこの発言の「棋戦そのものに傷がついた」の部分はフマキラー者側の言い分ではなく、小林理事長の見解であることが後日棋院のHPに記載されています。
「棋院側の説明なんかおかしくないか?」というのが正直な感想です。
批判ツイートで怒り心頭⇒依田許せん!という思いからの仕打ちに見えてきてしまいます。
ツイートそのものはスポンサーに対してのものではありません。
批判ツイートでスポンサーが傷ついたというのは小林理事長個人の見解だし、準決勝が取りやめになったことで棋戦に傷がついたのであればそれは棋院側が強要したこと。
一つの棋戦がなくなったことを一人の棋士の責任にするのはどう考えても無理があります。
まとめ
今回の流れです。ニュースサイトも見ていますが、依田九段のブログからの情報にやや偏っているので日本棋院側からの見解を聞きたいです。
少なくとも囲碁棋士から対局を半年間取り上げるに値するようなことなのでしょうか。
- 依田九段、2/12付で半年間の対局停止
- きっかけは執行部への批判ツイート(現在は削除、謝罪済み)
- 準決勝の不戦敗を強要された?
- 「一連のツイートで棋戦に傷をつけた」という理事長の見解